キシリトール
最近テレビや雑誌などで、虫歯予防効果があるということで話題になっているキシリトール (xylitol)。今回はこのキシリトールについてのお話です。内容がとても長くなってしまったため、今回は複数のページに分けて掲載致します。
キシリトールとは
まずは、キシリトールとはどんなものなのかについてのお話です。その他の代用甘味料の仲間についてのお話や、代用甘味料が低カロリーな理由などもお話しています。
キシリトールとは
キシリトール(xylitol)は、糖アルコールの一種で天然の代用甘味料です。糖アルコールは水に溶けたときに周りの熱を吸収するため、摂取するとひんやりと感じます。糖アルコールにはソルビトール・マルチトールなどたくさんの仲間があり、摂取カロリーが少なく虫歯の原因にならない甘味料として多くの食品に用いられていますが、その中でもキシリトールは虫歯予防効果もあるということで話題になり、ガムの名前と共に最も有名な甘味料ではないでしょうか。
こういった甘味料は合成甘味料とも呼ばれたりしますが、キシリトールやソルビトール・エリトリトールなどは、自然の野菜や果物の中にも含まれている天然の甘味料です。特にキシリトールは、多くの野菜や果物に含まれているだけでなく、人間の体の中にも微量ですが存在し、肝臓で1日に約15g位作られています。
いちごの写真 たくさん含まれているのは、いちごやカリフラワーで、可食部100g当たり300mg以上含まれています。その他では、ほうれん草・玉ねぎ・人参などにも100mg前後、レタスやバナナにも微量ですが含まれています。
とは言っても、ガムなどに甘味料として用いられているものは、野菜や果物から抽出したものではなく、白樺などの木やトウモロコシの芯などに含まれるキシランヘミセルロースという天然の成分を原料として、加水分解してできるキシロースに水素を化合することで人工的に作られたものです。そのため、日本ではもともと木糖と呼ばれていました。
日本で使用されているキシリトールは、そのほとんどがフィンランドから輸入したもので、フィンランドでは製紙業が盛んなため白樺が大量に使われており、紙の原料であるセルロース以外の成分はいらないので、その残りを利用してキシリトールを生産しています。キシランヘミセルロースは、白樺だけでなく全ての草木に含まれていて、キシリトールの原料にすることが出来ます。オーストラリアでは、服の裏地を作るために樫木を使うので、その残り成分からキシリトールを作っています。
代用甘味料が低カロリーな理由
代用甘味料として用いられる糖アルコールは、低カロリーということでも知られていますが、カロリーが低いのは糖アルコールが体内に吸収されにくいためで、普通の糖類は小腸で吸収されるのですが、糖アルコールは小腸で吸収されにくいため、消化されないまま大腸に流れてしまいます。吸収されなかった糖アルコールは、そのまま代謝されることなく尿と一緒に体外に排出されます。
また、大腸は消化されずに流れてきた糖アルコールを消化しようとして水分をたくさん出すため、大腸内の水分が増えてお腹がゆるくなり、弱い下剤のような効果がでますが、毒性があるわけではないので心配ありません。
ちなみにキシリトールのカロリーは2.4kcal/gで、最もカロリーが低いとされているのは、メロン・ブドウ・梨などの果物や醤油・味噌・清酒などの発酵食品に含まれており、ブドウ糖を発酵させて作られるエリトリトールで、わずか0.2 kcal/gしかありません。
糖アルコールは体内に吸収されにくいことで、普通の砂糖などと比較して血糖値が上昇しにくいので、糖尿病の人や低炭水化物ダイエットを行っている人も摂取しやすくなっています。
体に優しい糖アルコール
キシリトールは、1997年に厚生省(現厚生労働省)で食品添加物として許可される10年以上も前から、点滴剤に含まれる炭水化物として使用されていて、アメリカの食品衛生安全局でも、1日の摂取量に制限を与えない食品として扱われているなど、とても体にやさしい甘味料です。キシリトールだけでなく、他の糖アルコールも体に優しい成分なので、様々な用途に使用されています。(キシリトールはとても高価なのでガムなど以外ではなかなか使われません)
例えばソルビトールは、惣菜の佃煮や照り焼きなどの、表面のツヤを良くするために使われますし、餃子の皮には保湿のために使われています。ソルビトール・マルチトールなどは良く使われているので、成分表などを見てみると見つけられるかも知れません。
注意しなければならないのは、犬にタマネギやにんにく、チョコレートやコーヒーなどを食べさせると、中毒を起こしてしまうことは良く知られていますが、キシリトールも犬にとってとても危険です。犬がキシリトールを摂取すると、インスリンの過剰分泌によって肝障害や低血糖発作になってしまい、場合によっては死んでしまうこともあるそうです。最近は低カロリー商品が増えてきていますので、犬を飼っている方は注意が必要です。