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キシリトールと虫歯予防

次にキシリトールの虫歯予防効果についてのお話です。キシリトールは確かに虫歯予防に効果がありますが、万能ではありません。正しい知識を持って効果的に使いましょう。

キシリトールの虫歯予防効果

キシリトールには虫歯予防効果があると言われていますが、キシリトールの特徴は「虫歯の原因にならない」ことと「虫歯になりにくい環境をつくる」ことであって、「虫歯の発生を防ぐ」「虫歯になった歯を修復する」などの直接的な効果はありません。

要するに、キシリトールガムを食べるだけで虫歯を完全に防げるわけではありませんので、ダラダラ食いをしない、正しい歯磨きをする、定期的な歯科検診を受ける、フッ素が配合された歯磨き粉を使うなどを心がけた上で、補助的な役割として摂取するのが好ましいのです。

また、キシリトールが虫歯の原因にならないからといって、キシリトール入りのガムなどが全て虫歯の原因にならない訳ではありません。市販されているものの中にはキシリトールと一緒に糖類が含まれているものもあり、その場合は酸が発生するため虫歯の原因になってしまいます。

飴などの糖類の濃度が高いものを口にした後や、口腔内に糖類を含む食べかすが残っている状態も同様で、キシリトールガムを咬んだくらいでは虫歯予防の効果は期待できません。

ミュータンス菌とキシリトール

虫歯の原因菌であるミュータンス菌は、糖類を分解して発酵させを作ります。酸によってお口の中が酸性に傾くと、酸の力が歯のエナメル質を溶かしてしまい虫歯になってしまいます。

ところがキシリトールの場合は、ミュータンス菌が取り込んでも分解することができないため発酵せず、虫歯の原因となる酸が作られません。それだけでなく、ミュータンス菌は分解することのできないキシリトールをどんどん取り込むので、疲れてしまって活動が弱まります。長期的にキシリトールの摂取を続けると、ミュータンス菌の繁殖力が弱まっていくため、さらに酸が生産されにくくなり虫歯になりにくい環境になって行きます。

輝いてる歯のイラスト

私たちのお口の中では、ミュータンス菌の作り出す酸と、それを中和しようとする唾液の働きが常に戦っています。唾液はお口の中の酸を中和するだけでなく、酸の力によって溶けてしまったエナメル質を再石灰化して元に戻す力があります。
甘いものを多量に摂取したり、少量でも頻繁に摂取したりすると、酸の力が優勢になって再石灰化が追いつかなくなり、虫歯になって行きます。

キシリトールには唾液の分泌を促す効果があるため、摂取することで唾液の力が優勢になって再石灰化しやすくなり、虫歯になりにくくなります。

キシリトールの効果的な使いかた

これらの虫歯予防効果は、ガムやタブレットなどお口の中に長く留まるものでないと効果はなく、それ以外のお菓子や食品・飲料などにキシリトールが入っていても、虫歯予防の効果はあまり期待できません。また、少しでも糖類が入っているとそれ自体が虫歯の原因になるため、シュガーレス糖類が0gであることが必須条件で、キシリトールが50%以上入っていることが望ましいとされています。

キシリトールガムの写真

歯科医院で販売しているキシリトールガムは、基本的に歯科医院専売品なので、シュガーレスでキシリトールの配合率が100%~90%と高く、キシリトールの他にもフクロノリ抽出物(フノラン)やリン酸カルシウムなどといった、再石灰化を促進して歯を健康に保つ成分が配合されているので、虫歯予防効果が期待できますが、一般のスーパーやコンビニエンスストアなどで市販されているキシリトールガムは配合率が70%~30%位のものが多く、中には糖類が含まれているものもあるため、効果があまり期待できない場合があります。

虫歯予防効果を十分に発揮させるためには、シュガーレスでキシリトール配合率の高いガムかタブレットを、お口の中が酸性に傾く1日3回の毎食後と、唾液の分泌量が減少する夜寝る前に噛む習慣を3ヵ月以上続ける必要があります。もちろん、3ヶ月経ったからといってすぐにやめてしまうと、再び虫歯の原因菌が増えはじめ、予防効果はだんだん無くなっていってしまいますので、継続していくことが大切です。

毎食後の他に、おやつなどで間食をした後にも噛むと更に効果的ですので、何かを食べたら噛むという習慣をつけると良いでしょう。また、一度にたくさん噛んだからといって効果が高まるわけではないので、何度かに分けてこまめに噛む方が効果的です。ガムの場合は、味が無くなってからもしばらく噛み続けると、唾液の分泌が促進されるので更に効果的です。

生まれた赤ちゃんに歯が生える3ヶ月以上前から、お母さんや家族がキシリトールガムを噛む習慣をつけると、ミュータンス菌の母子感染の予防に繋がり、子供が虫歯になりにくくなることも証明されています。

キシリトールの研究

1970年代にフィンランドで、食事に使用する糖分をすべてキシリトールにしたグループと、通常の食事をしたグループとで虫歯の状態を比較する実験が行われました。3年後の実験結果では、キシリトールだけを使用したグループは、通常の食事をしたグループよりも明らかに虫歯が減ったことが証明されました。更に、普通の食事をした後にキシリトールガムを噛んだ場合にも、食事に使用する糖分をすべてキシリトールにした場合と同等の虫歯予防効果があることも分かりました。

それ以外にもキシリトールに関する研究は多数報告されていますが、他の糖アルコールについてはまだ歴史が浅いということもあって、現時点では臨床研究の報告があまりなく、臨床研究によって虫歯予防効果が証明されているのは、糖アルコールの中でもキシリトールとソルビトールだけです。

しかし、アメリカの食品医薬品局(FDA)が、食品に「Does not promote tooth decay(虫歯を起こさない)」と表示するための規定を定めた法律では、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトールなど様々な甘味料は虫歯の危険性に違いはないとしており、これらの糖アルコールには同じように虫歯予防効果が期待できると言われています。